人には、
忘れたくても、
忘れられない記憶がある。
俺にとってそれは、
小2の頃の、
ある日の光景だった。
今でも覚えている。
父の手にあったもの。
家の空気。
母の表情。
そして、
何もできなかった自分。
子どもだから、
何も分からない。
そう思われがちだけど、
本当は逆だったのかもしれない。
言葉にはできなくても、
「何かがおかしい」
その空気だけは、
大人より敏感に感じてしまう。
あの日もそうだった。
いつもと違う家。
いつもと違う父。
いつもと違う母。
そして、
父の手にあったもの。
あの日から、
俺の中で何かは、
少しずつ変わり始めた。
いや、
変わったんじゃない。
壊れ始めたのかもしれない。
今なら分かる。
人は、
大きな出来事で壊れるんじゃない。
あの日感じた痛みを、
見ないふりし続けた時に、
少しずつ壊れていくんだと思う。
俺も、そうだった。
でも、
壊れたままじゃ、
終わりたくなかった。
だから今、
こうして人生をやり直している。
人は、
何度でもやり直せる。
俺は、それを証明したい。